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東京地方裁判所 昭和55年(行ク)24号 決定 1980年6月10日

申立人

中央労働委員会

右代表者会長

平田富太郎

右指定代理人

西川美数

外三名

被申立人

オリエンタルモーター株式会社

右代表者

倉石得一

右代理人

坂本成

主文

本件申立を却下する。

理由

一本件申立の趣旨及び理由は、別紙記載のとおりである。

二本件の申立人である中央労働委員会(以下、中労委という。)が、昭和五四年一二月一九日付でなした、不当労働行為救済申立事件についての再審査申立人オリエンタルモーター株式会社(以下、単に会社ということがある。)と、再審査被申立人総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会(以下、単に分会ということがある。)との間の再審査主文は、当初、茨城県地方労働委員会が発付した「被申立人オリエンタルモーター株式会社は申立人総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会に対し、同分会組合事務所貸与の件に関して、土浦事業所長とともに、速やかに誠意のある団体交渉を行わなければならない。その余の申立ては棄却する。」との命令(昭和五二年一二月二四発付)に対して

「1 初審命令主文第一項を次のとおり変更する。

オリエンタルモーター株式会社は、総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会と、同分会組合事務所貸与の件に関して、速やかに誠意ある団体交渉を行わなければならない。

2 その余の本件再審査申立てを棄却する。」

旨の言渡しをなし、その認定の理由は、別紙命令書理由記載のとおりである。

三そこで検討する。

(一)  中労委が本件について認定した事実は、別紙命令書の理由中「当委員会の認定した事実」の記載のとおり(年月に二、三混乱が認められる。)である。

(二)  そして、中労委は、右の認定事実を前提として、会社が分会に対して、昭和五一年二月六日以降、右分会が単独で行つた団体交渉の申入れに応じないことをもつて、不当労働行為であると判断しており、その判断の根拠は次のように要約することができる。すなわち、

(1)  分会は、昭和五一年二月六日及び同月一二日、会社に対し、単独で、組合事務所の設置場所に関して、団交申入れをし、その申入れの事情について、何ら説明をしていないが、総評全国金属労働組合千葉地方本部オリエンタル支部(以下、支部という。)から、既に会社に対し、土浦における組合事務所の設置場所については、事業所ごとの交渉に委ねたいとして、その理由を説明しており、右事務所の設置については、会社と支部との間での団体交渉事項として残されたものは、設置の場所と、その広さの問題だけであるから、これを直接使用することになる分会があらためて団交の申入れをすることは当然であること。

(2)  会社が、分会の団交申入れを支部の申入と二重の申入れに該当すると考えたとすれば、会社は、そのことを分会に告げ、直接質して確認することができたのに、分会とは全く交渉していないこと。

(3)  また、組合事務所の貸与については、会社、支部間の交渉により基本的に了解されており、場所と広さの点だけが未解決なのであるから、この点について、支部交渉とするか分会交渉とするかの振り分け方については、会社は支部もしくは分会と交渉を行うべきであるのに、これをせず、分会との団交を拒否していること。

以上の三点を主要な理由として、会社が分会の昭和五一年二月六日以降、単独で行つた団交申入れに対して、これを拒否していることをもつて、不当労働行為であると判断している。

四提出された疎明によれば、以下の事実が一応認められる。

(一)(1)  昭和五〇年五月一五日に開催された会社、支部間の第一回団体交渉において、「会社は、現時点で、支部を唯一の労働組合と認め、団体交渉を認める。」旨、双方で相互に確認し、組合事務所を豊四季、土浦の各事業所に一か所ずつ設置することについても、基本的に了解がなされた。その後の会社、支部間における組合事務所の設置、貸与をめぐる交渉は、概ね前記命令書の認定事実(当委員会の認定した事実)記載のような経過により行われたが、分会は、同五〇年一二月二二日付の文書(疎乙第四号証)により、会社に対し、同五〇年一一月二一日、総評全国金属労働組合茨城地方本部に加入した旨通知し、同五一年二月六日からは、分会執行委員長名義で会社及び土浦事業所の事業所長に対し、分会組合事務所の設置に関して、団交の申入れをなすに至つたこと(なお、同五〇年九月一六日付の会社に対する「土浦分会組合事務所設置場所について」と題する要求書(疎乙第一号証)は、「千葉地方本部オリエンタル支部執行委員長」と「同土浦分会代表」の名義による連名によつて提出されており、さらに分会が正式に労働組合として発足した以降の同五〇年一〇月九日付の団交申入書(疎乙第二号証の一)は、支部と分会の各執行委員長の連名で出されている。それ以前の会社に対する団交申入れ等は、全て支部執行委員長名義でなされ、分会の代表者等が表示されたことはなかつたことが一応認められる。)。その後も、支部は、分会とは別個に会社に対して、「組合事務所設置の件」等を議題とする団交を、数回にわたつて申入れていること。

(2)  その後、分会は、同五一年一〇月四日付の文書(疎乙第七号証の一)で、会社に対し、分会名称を総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会と改称した旨、通知したこと。会社は、これに関して、同五二年七月五日に支部との間に開催された団交において、支部に対し、土浦事務所の問題は、従来、支部と交渉してきたのであり、分会が同支部と別個であれば、その問題は白紙となるので、分会の性格、位置づけを明確にして貰いたい旨述べ、同月七日の団交においても、分会が同支部と別個のものであれば、土浦事務所問題は白紙還元となり、改めて貸与の許否からの交渉になる旨、支部に述べていること。

(3)  同五〇年一〇月六日付で、支部から会社に対して提出された種々の労働条件に関する要求書(疎乙第一一号証の一ないし五)においては、土浦分会及び会社の他の事業所に設けられた同支部の下部組織である高松、豊四季の各分会の要求も含まれており、支部の組合事務所設置に関して、当初から土浦事業所と共にその設置が要求されてきた豊四季事業所に関しては、支部が一貫して会社との交渉に当つてきており、また、支部が、組合事務所設置に関して、会社に団交応諾等を求めて、千葉地方労働委員会に申立てた不当労働行為救済申立事件(千葉労委昭和五〇年(不)第一三号事件)においては、その申立の趣旨(但し、同五一年一〇月二〇日付の準備書面疎甲第一四号証による。)では、単に、「組合事務所設置の件を交渉事項とする団体交渉」という表現をとつているが、後に、同支部弁護団の弁護士からの分会の弁護団に宛てた報告書(疎甲第一五号証)では「(イ)会社に対して、事業所ごとの交渉の件を交渉事項とする団交応諾を求めた申立は取下げた。(ロ)前記申立の趣旨にいう組合事務所とは、支部組合事務所のみ(豊四季分会事務所を含む。)で、土浦分会事務所は含まれていない」旨述べていること。

以上の事実が一応認められる。

(二)  右事実及び、別紙命令書中、「当委員会の認定した事実」からすると、会社は、支部の組合事務所の設置に関しては、一貫して、支部との間で交渉を重ねてきたのであり、支部の側でも、少くとも分会が労働組合として正式に発足し、当事業所の労働条件等についてではあるが、独立に組合として活動するに至るまでは、同様の趣旨で会社に団交を申入れ、交渉をしてきたものと一応認められる。そうだとすると、同支部の規約(疎甲第一二号証)によつて、土浦、豊四季等の五つの事業所等に設けられた各分会は、支部の下部組織とされ、さらに、支部の従たる事務所は各分会におくと規定されており、また、会社の同五一年三月一八日付回答書添付の組合事務所等使用貸借協定書(疎乙第九号証の二)において、土浦及び豊四季事業所に設置する組合事務所の使用貸借の借主が支部になつていることから考えても、組合事務所の設置に関する会社との間の交渉当事者は、支部であつたことが明らかであると認められる。

しかるに、分会は、独立の組合として発足後、支部の上部団体でもある総評全国金属労働組合千葉地方本部から同茨城地方本部に加入の変更をし、さらに、その名称も、同五一年九月一九日には右千葉地方本部オリエンタル支部土浦分会から茨城地方本部オリエンタル土浦分会へと変更したものであり、同五一年二月六日に、突如として、何らの説明をもせずに、会社に対して、「土浦分会組合事務所について」の団交申入れを行い、その後も何らの説明をすることなく、同様の団交申入れを行つているものである。

さらに、従来は、団交の申入れは、支部執行委員長名義でなし、土浦事務所問題も含めて、「組合事務所設置の件」等の議題の下にその申入れがなされていたのであり(但し、同五〇年九月一六日の要求書が支部執行委員長と分会代表者の、また、同年一〇月九日付の団交申入書が、支部執行委員長と分会執行委員長両名の連名により出されたことは前認定の通りである。)、分会が単独で団交申入れをするに至つた同五一年二月六日以後においても、支部は従来と同様の「組合事務所設置の件」を議題とする団交の申入れを会社に対してなしており、会社は、同五一年三月一八日には、組合事務所についての最終案を支部に提示し、支部はこれに対して、土浦事務所の広さを再考して貰いたいと申入れる等、土浦事務所に関しても実質的な交渉が行われてきた。そして、右各事情については、支部と分会とは、共に了解していたであろうことを認めることができる。そして、さらに、中労委のなした本件命令書の認定した事実によると、同五一年七月二六日に至つて、支部は従来のやり方とは表現を変え、「支部組合事務所設置の件」と題する団交申入書を会社に送付した事実を一応認めることができる。かような経緯に照らすと、少くとも、分会が正式に組合として発足するまでは、土浦事業所における支部の連絡的機能を担当するにすぎず、独自の労働組合たる性格は有していなかつたことが窺われ、その発足後も、右会社と支部間の交渉の経過、分会の上部団体の変更等に照らすと、分会の性格は会社にとつて不明確なものであつたといわざるを得ない。したがつて、分会が同五一年二月六日に、会社に対して、分会単独による団交申入れをなした趣旨は、分会が支部とは別個の(上下の組織関係にない)労働組合として、従来までの、支部から会社に対する要求とは無関係に、分会独自の組合事務所設置に関して申入れたものか、もしくは、同分会が同支部の下部機関であり、従来までの支部と会社間の交渉を前提として、組合事務所を現実に使用することになるのは分会であるから、支部の協議により、その交渉権限の配分を受けて、右申入れをしたものか、あるいは(分会が支部の下部組織の関係にあることは右同様であるが)、単に、支部の申入れと重複して申入れをなしたにすぎないものかは、右の事情からすると、会社にとつては、全く不明であると言わねばならない。会社は、支部との間での組合事務所の設置に関して、その設置と貸与を基本的に了解したうえで、設置場所と広さに関して支部と交渉を重ねてきたのであり、本件の如き経緯の下で、支部とは別個に、分会が単独で会社に対して分会事務所の設置に関する団交を申入れるについては(そのことによつて、当然のことながら、会社にとつては、分会の申入れが従来の支部との交渉を前提としたものか否かで、極めて重大な差異を生ずるものである、との会社の主張は、一応肯定することができる。)分会もしくは支部において、従来までのやり方とは違つた方法等について、本件の分会単独での団交申入れは、それが如何なる趣旨の申入れであるかを明確にすべき信義則上の義務があると言わなければならない。

しかるに、本件においては、右分会の申入れは、その点について何らの説明もなく、前後の経緯からしても、極めて唐突なものであり(支部のこれに対する態度も、分会の右申入れ後も土浦事務所について会社と実質的に交渉する等、極めて不明確なものであつたことは前認定のとおりである。)、会社がその趣旨を推測することも不可能な状態であつたと言わざるを得ないところである。そうすると、分会からの会社に対する右申入れに対して、会社が直ちに分会との団交に応じなかつたとしても、一応無理からぬものであつたと認めることができる。そして、その後、会社は、同五二年七月五日、同月七日の支部との団交において、支部に対し、分会の右申入れの趣旨を質し、仮に、分会の申入れが支部の申入れと別個のものであれば、土浦事務所問題は白紙となる旨述べていることは、前認定のとおりであり、全疎明によるも、これに対して、支部もしくは分会が、分会の申入れの趣旨を明示したと認めるに足る疎明は存しない。そうだとすると、かような事情の下において、会社が、分会からの団交申入れに応じていないことをもつて、直ちに不当労働行為に該当すると判断することは、極めて疑問があるといわねばならない。

(三)  そこで、さらに中労委の判断を検討するに、本件分会事務所の設定については、同五〇年八月一七日に、既に支部から、土浦事務所の設置場所に関する交渉は、事業所ごとの交渉に委ねたいとの申出がなされていたとする点については、右の申出は、右に認定の事情からすると、未だ分会が独立していない時点でなされたものであり、組合事務所の設置場所の当否については、現場の組合員が一番熟知しているからという理由で、事業所ごとの交渉に委ねたいとしたものにすぎず、これをもつて分会事務所に関する交渉は、今後は分会の独有の交渉に委ねたとした趣旨であるとは、到底、認めることはできない。したがつて、右申入れにより(その後の支部と分会の活動状況から考えても)、支部が、土浦事務所問題についての交渉権限の配分を会社に対して示していた、と解することはできない。次に、分会のこの申入れが、支部の申入れと二重の申入れにあたるかどうかにつき、会社が分会との交渉に応じたうえで、分会にそれを質すべきであつた旨判断しているが、本件の如き事情の下では、会社にそこまでの義務を負わせることは妥当でないと考えられ、むしろ、分会(もしくは支部)の側において、交渉権限の変更等を説明する義務があると考えられることは前認定のとおりである。そして、本件では、同五二年七月五日、同月七日の団交において、会社は支部に対して、分会との関係を質していることも前記認定のとおりである。さらに、中労委は、事務所問題については、設置場所と広さの点だけが未解決であるから、会社はこの点についての交渉権限の配分を、支部もしくは分会と協議すべきであつたと認定しているが、かようなことは、本件分会の申入れが、支部の下部組織として、従来の支部、会社間の交渉を前提としたものである場合に考え得ることであり、本件の如く、分会の申入れの趣旨が全く不明の場合には妥当しないものと考えるのが相当である。

そうすると、以上のとおり、提出された全疎明を前提とする限り、中労委のなした本件救済命令は、その主要な論拠部分において極めて大きな疑義があり、現時点において、それを維持することは疑わしいと言わざるを得ないから、本件について、緊急命令を発することは、相当でないものと考える。

五よつて、本件申立を理由なきものとして却下することとし、主文のとおり決定する。

(小野寺規夫 赤西芳文 鈴木浩美)

〔申立の趣旨〕

右当事者間の御庁昭和五五年(行ウ)第二五号行政取消請求事件が確定するまで、申立人が昭和五五年一月二四日被申立人に交付した中労委昭和五三年(不再)第一号事件命令に従い、「被申立人は、総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会と、同分会組合事務所貸与の件に関して速かに誠意ある団体交渉を行わなければならない。」との決定を求める。

〔申立の理由〕

一 申立外の総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会(以下「分会」という。)は、昭和五一年二月六日以降被申立人会社に対して、同分会組合事務所貸与の件に関して再三にわたり団体交渉の申し入れをしたが拒否された。

二 申立外分会は、右団体交渉拒否につき昭和五一年四月一二日、不当労働行為であるとして茨城県地方労働委員会に救済の申立てを行つたところ、同委員会は審査の結果、昭和五二年一二月二四日付をもつて別紙疎甲第一号証の二「主文」記載のとおりの命令を発し、右命令は同月二八日被申立人に交付された。

三 被申立人は右命令を不服として昭和五三年一月一〇日、申立人に再審査の申立てを行つたが、申立人は再審査の結果、昭和五四年一二月一九日付で別紙疎甲第一号証の一「主文」記載のとおり命令を発し、右命令は昭和五五年一月二四日被申立人および申立外の分会に交付された。

四 被申立人は、昭和五五年二月二二日、右救済命令の取消しを求める旨の行政訴訟を提起し、御庁昭和五五年(行ウ)第二五号事件として現在審理中である。

五 被申立人は、申立人の命令交付後も、別紙分会からの要請書にあるように、再三分会からの団体交渉の申し入れに拘らずこれを拒否しており、任意に申立人の命令を履行する態度を示していない。したがつて、本件訴訟が解決するまで、前記命令の内容が実現されないならば、既に労使間で基本的には合意している組合事務所貸与の実現は困難となり、申立外の分会は、組合活動の本拠となるべき場所のないままの状態におかれ、分会の団結権の侵害は回復し難いものとなることは明白であり、ひいては労働組合法の立法精神も没却されることになるので、申立人は、昭和五五年三月一九日第八四回公益委員会議において、労働組合法第二七条第八項の規定に基づき、本申立てをなすことを決議した。

よつて、本申立てに及んだ次第である。

【参考・命令書】

(中央労働委員会昭54.12.19命令)

再審査申立人 オリエンタルモーター株式会社

代表取締役 倉石得一

再審査被申立人 総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会

執行委員長 酒井清

〔主文〕

一 初審命令主文第一項を次のとおり変更する。

オリエンタルモーター株式会社は、総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会と、同分会組合事務所貸与の件に関して、速かに誠意ある団体交渉を行わなければならない。

二 その余の本件再審査申立てを棄却する。

〔理由〕

第一 当委員会の認定した事実

一 当事者等

(一) 再審査申立人オリエンタルモーター株式会社(以下「会社」という。)は、肩書地に本社及び豊四季事業所を、茨城県土浦市、香川県高松市及び山形県鶴岡市に事業所を置き、精密小型モーターの製造販売等を業とする資本金一億円の会社である。会社の全従業員は約九〇〇名であり、そのうち本社及び豊四季事業所は約四〇〇名、土浦事業所は約一〇〇名である。

(二) 再審査被申立人総評全国金属労働組合茨城地方本部オリエンタル土浦分会(以下「分会」という。)は、土浦事業所に勤務する会社従業員をもつて結成された労働組合であり、昭和四九年一二月二二日、会社に勤務する従業員をもつて結成された総評全国金属労働組合千葉地方本部オリエンタル支部(以下「支部」という。)の下部組織でもある。

また、当初、総評全国金属労働組合千葉地方本部オリエンタル支部土浦分会という名称であつたが、昭和五一年九月一九日分会規約を改正し、現在の名称に変更した。なお、支部結成時の支部組合規約には、分会に関する規定はなかつたが、分会は支部が公然化した頃より事実上分会として活動していた。

二 組合事務所貸与等についての支部、会社間の交渉経過

(一) 昭和五〇年五月一二日、支部は組合公然化大会を開催し、翌一三日会社に対して支部結成の通告をするとともに、豊四季事業所内及び土浦事業所内にそれぞれ組合事務所を設置、貸与すること等を要求し、団体交渉を申し入れた。

(二) 同年五月一五日、支部、会社間で第一回の団体交渉が行われ、会社は豊四季及び土浦事業所内に各一ケ所の組合事務所を設置貸与することについて基本的に了解した。なお、組合事務所の具体的設置場所及び貸与条件等について、会社は同月一九日に予定された団体交渉の際に回答することにした。

(三) 同年五月一九日、支部、会社間で第二回の団体交渉が行われ、さらに同月二八日、第三回の団体交渉が行われた。その際会社は、「組合事務所等使用貸借協定書案」及び豊四季事業所内の組合事務所の具体的設置場所について組合に提示したが、支部は同案を持ち帰り検討することにした。

(四) 同年六月五日、支部、会社間で第五回の団体交渉が行われ、会社が提示した組合事務所等使用貸借協定書案及び豊四季組合事務所の設置場所について話し合われた。その結果、支部は上記協定書案について若干の留保条項を除き合意したが、組合事務所の設置場所については狭隘であるとの理由により反対し、合意は成立しなかつた。なお、このとき会社は土浦事業所の組合事産所について、具体的提案をしなかつた。

(五) 同年夏頃、支部、会社間で組合事務所貸与に関する協定締結のための事務折衝が行われたが、支部は、上記組合事務所等使用貸借協定書案に、①組合事務所の設置場所については豊四季事業所内の中庭に面した林の中に設置し、それまでは暫定的に第二事務棟の倉庫内に設置貸与する。②土浦事業所に組合事務所を設置貸与する、などを内容とする覚書を添付して会社に提示した。これに対し、会社は、覚書中に①の後段部分など合意していないものがあるとして、協定締結を拒否した。

(六) 同年八月八日、会社は支部に対し土浦事業所の組合事務所は同事業所の組合員数を考慮し一〇m2の広さとする、また、設置場所は、正門に向つて左側敷地内のパーキングスペース付近とする旨図面で示し提案した。

(七) 同年八月一二日支部は会社に対し、先に提案していた事業所交渉の件に関し、事業所ごとに限られる労働条件及び施設に関しては事業所ごとに協議すること、ただし、協議事項が全社に影響のおよぶ場合は、支部、会社間交渉による旨支部の方針を記載した書面を提出した。その後の団体交渉において支部は、会社に対して土浦事業所の組合事務所の設置場所については現場の組合員が一番熟知しているので、事業所ごとの交渉に委ねたい旨述べた。これに対し会社は、組合事務所の件については、土浦事業所長(以下「事業所長」という。)に交渉権限を与えていない、また、この問題は全社的な問題であると理解しているので支部、会社間の交渉において行いたい旨主張し、双方の見解は一致しなかつた。

(八) 同年九月一六日、支部執行委員長及び分会代表者は連名で、土浦事業所の組合事務所について、会社提案の場所では工場棟より離れ過ぎており、組合員が充分活用できないので、コンプレッサー室と塗装工場間の空地に設置してほしい旨の要求書を会社に提出した。これに対し会社は、設置場所の変更はできない旨口頭で回答した。

(九) 同年九月三〇日、分会は大会を開催し規約等を定め、正式に労働組合として発足した。なお、同年一一月頃分会は、会社に対し分会を正式に結成した旨通知した。

(一〇) 同年一〇月九日、支部執行委員長及び分会執行委員長は連名で、土浦事業所の従業員の配置転換に関する要求書及び土浦事業所において団体交渉を行うよう要求した社長あての申入書を事業所長に提出した。これに対し会社は、一〇月一六日付内容証明郵便で、労使間の問題は極めて重要であるので、事業所長には交渉権並びに妥結権等一切の権限を付与していないから、本社において支部との間で統括処理することにしている。したがつて、新たな要求事項があるならば、支部より社長あてに提出してもらいたい旨分会あて回答書を送付した。

なお、同日支部は、千葉県地方労働委員会(以下「千葉地労委」という。)に対し、就業時間中の組合活動の範囲の件等を交渉事項とする団体交渉応諾等を求めて救済を申立て(昭和五〇年(不)第三号事件)た。昭和五一年一〇月二〇日支部は、同申立てに、組合事務所設置の件を交渉事項とする団体交渉応諾等の救済申立てを追加した。

(一一) 同年一一月一一日、上記事件にかかる千葉地労委の勧告により、支部、会社間で団体交渉が行われたが、その席上組合事務所の件について会社は支部に対し、相互理解と信頼関係を作るためにも、組合規約、組合員名簿を提出してもらいたい。話はそれからであり、もしその提出がなければ組合事務所を貸与することはできない。第一回の団体交渉で組合事務所を貸与することを合意した際、会社は組合から組合規約の提出が当然であると思つていた旨述べた。これに対し支部は、組合規約、組合員名簿の提出を拒否したので、話合いは進展しなかつた。また、事業所ごとの交渉の件についても交渉が行われたが、会社は①事業所長には交渉権、妥結権等を付与していないので、労使間の問題は、支部、会社間交渉で行いたい、②事業所ごとの団体交渉については、組合の組織内容が理解できないので、組合規約を提出してもらいたい旨主張した。これに対し支部は、①については、事業所長が当該事業所の総括責任者である以上、事業所限りの問題は事業所ごとに団体交渉を行うべきだと主張し、見解は一致しなかつた。

なお、支部、会社間の団体交渉には、分会の役員二名が支部執行委員として出席していた。

(一二) 同年一二月二五日、支部は会社に対し「組合事務所貸与の件」を議題とする団体交渉を申入れた。これに対し、翌五一年一月二一日、会社は組合事務所の設置、貸与の条件として、組合規約と組合員名簿の提出を求め、それらの提出後組合事務所について話し合う用意がある旨の文書回答を行つた。

(一三) 支部は会社に対し、昭和五一年二月一九日、二月二四日及び二月二七日、「組合事務所設置の件」を議題とする団体交渉を申入れた。これに対し会社は、同年二月二三日、二月二七日及び三月一日、組合事務所については、現在検討中であり検討終了後回答する旨それぞれ文書回答を行つた。

(一四) 同年三月五日、支部は会社に対し、労使間の懸案事項についての団体交渉を、同月九日に開催したい旨申入れた。

(一五) 同年三月九日、支部は、会社に対し、上記懸案事項の具体的議題を①組合事務所設置の件、②組合備品の返却及び食堂使用の件、③就業時間中の組合活動の件、④事業所ごとの団体交渉の件とする旨の通知書を提出した。これに対し三月一一日会社は①について、前記(一三)と同趣旨の文書回答をした。

(一六) 同年三月一八日、会社は前記(10)認定の別件事件の審査委員長の要請にもとづいて、組合事務所についての会社最終案として組合事務所等使用貸借協定書により組合に貸与する旨等の文書による回答を行つたが、同回答書中の添付図面には、豊四季事業所及び土浦事業所内にそれぞれ組合事務所を設置する場所が示されており、それによると分会組合事務所の設置場所は、昭和五〇年八月八日付提案を変更し、正門向つて右側の隅とし、広さは従来どおりとするとの提案であつた。

(一七) 同年三月二五日支部は会社に対し組合事務所設置の件について団体交渉の開催を申入れたが、三月二九日会社は組合事務所設置の件については、上記三月一八日付回答書で回答済である旨、文書回答をするだけで支部との団体交渉に応じなかつた。

(一八) 同年三月二九日支部は、会社の上記三月一八日付文書に対する回答として、支部組合事務所の設置場所について会社案に反対であるとして、その問題点を指摘し、理由をのべるとともに、分会組合事務所については、二〇m2以上の広さで再考してもらいたい旨文書で申入れた。

(一九) 同年四月八日及び四月一三日、支部、会社間で春闘要求をおもな議題として団体交渉が行われた。その際、組合事務所設置の件についても若干の話し合いが行われたが、会社は豊四季組合事務所について「一〇m2以上では建築基準法上問題がある。」「三月一八日回答が会社の最終案であるからこれ以上は譲れない。組合が折れない限りこの以上団体交渉をしても無駄である。」と主張し、具体的な進展はなかつた。

なお、四月一三日の団体交渉は、四月九日付支部の①組合事務所設置の件、②食堂使用について、を議題とする申入れと、四月一二日付会社の、①昭和五年度賃上げ要求について、②組合事務所設置の件、③食堂使用について、を議題とする双方の団体交渉申入れにより開催されたものであつた。

(二〇) その後も支部は、会社に対し組合事務所設置の件について団体交渉を申入れたが、会社はすでに最終回答を示しているので、組合が折れない限り話し合つても無駄であるとして団体交渉に応じることはなかつた。

(二一) 同年七月二六日、支部は従来の交渉議題の表現を替えて「支部組合事務所設置の件」と題する団体交渉申入書を会社に送付した。このときまで支部は、支部が団体交渉を申入れている以上、支部組合事務所についての団体交渉の申入れであることは当然のことであるとして、その団体交渉申入書には単に「組合事務所設置の件」とのみ記載していた。

三 本件団体交渉拒否について

(一) 昭和五一年二月六日及び二月一二日、分会は会社に対し、分会組合事務所をコンプレッサー室と塗装工場の空地に設置することを要求し、団体交渉の申入れを行つた。これに対し、同月一七日会社は分会に対して①要求並びに団体交渉の申入れは、支部を通じて行われたい。②分会組合事務所の件に関しては、上記二の(一二)認定の一月二一日文書で支部に回答済みである旨の文書回答を行つた。また、同月一九日、分会は会社に対し、上記同様の団体交渉を申入れた。

なお、分会が単独で団体交渉の申入れをしたのは、支部から分会組合事務所の設置場所等の交渉は、分会交渉により解決を図つてほしいとの要請にもとづいて行われたものであつたが、分会からは会社及び事業所長にその旨を説明したことはなかつた。

(二) 同年三月一日、分会は事業所長が同事業所の最高責任者であるとの理由から、会社に替えて事業所長に対し前記(一)と同旨の要求書及び団体交渉申入書を提出した。これに対し同月四日、事業所長は分会に対して①事業所長には交渉権限がないので団体交渉に応ずることはできない、②団体交渉の申入れはあらためて社長あてに提出してもらいたい。申入書は社長に回送した旨の文書回答を行い団体交渉に応じなかつた。また、その後も分会は事業所長に対し、上記同様の団体交渉の申入れをしたが、同所長は交渉権限がないとの理由を挙げるだけで団体交渉に応じなかつた。

(三) なお、事業所長の会社内での職階は、部長相当職にあたり、また、施設についての増改築の権限はなく、保守管理の権限のみ与えられていた。

(四) 昭和五一年四月一二日、分会は会社及び事業所長を被申立人として、茨城県地方労働委員会に対して、本件不当労働行為の救済申立てを行つた。

(五) 分会は、本件救済申立て後も、事業所長に対し数回分会組合事務所の設置場所について団体交渉を申入れたが、同所長は前記(二)認定と同様の回答をするだけで団体交渉に応じなかつた。

以上の事実が認められる。

第二 当委員会の判断

会社は、分会組合事務所の設置に関する分会の団体交渉の申入れに対し、会社がこれに応じなかつたことを不当労働行為であると判断した初審命令を不服として争うので以下判断する。

一 会社の団体交渉拒否理由の当否について

(一) 会社は、分会が今迄会社と支部との間で組合事務所問題全般について団体交渉を重ねてきた交渉経過を無視し、会社に何等説明もないまま、分会組合事務所の設置に関する団体交渉の申入れをしたことは信義則に反し許されないばかりでなく、二重交渉となる、また、会社の最終案に対し、支部からは文書で分会組合事務所問題を含め、その見解を示してきたが、分会からは何等の意思表示もなく、会社としては、本件申立て前後の五一年四月八日及び同月一三日の支部との団体交渉においても、組合事務所問題はその議題を、支部組合事務所に限るという認識はなかつたと主張する。

① たしかに、前記第一の三の(一)認定のとおり、分会はその申入れに際して会社に説明しておらず、また、分会の申入れと併行してなされている支部の申入れも、従来からの交渉議題を変えずなされているのであるから、分会の団体交渉申入れが適切なものであつたとはいい難く、かつ、この点のみについてみれば、会社がこの分会の団体交渉申入れを、二重交渉になると考えたのも無理からぬものである。しかしながら、前記第一の二の(七)認定のとおり、既に支部からは、会社との団体交渉の席上、事業所交渉についてと題する書面を提出し、土浦事業所の分会事務所の設置場所等については分会交渉に委ねたいとする理由を会社に説明しているのであり、支部が会社に示した事業所ごとの交渉の件についての組合側の方針と支部、分社の現実の対応との間にそごがあるともみられない。しかも、五〇年一一月の段階では、会社は既に支部との団体交渉を拒否し、会社、支部間での団体交渉が行われておらず、分会組合事務所についてはその交渉事項として残されたものが、その設置場所と広さの問題だけなのであるから、これを直接使用することになる分会があらためて団体交渉を申し入れることは、また当然の成りゆきである。

② また、会社が分会の団体交渉の申入れが、支部との二重の申入れであると考えたのであれば、そのことを分会に告げ、じかに分会の考え方を質して確認する等できたと考えられるのに、会社は、前記第一の三の(一)及び(二)認定のとおり、事業所長には権限がない、要求及び申し入れは支部を通じて行われたい、支部あて回答済であるなどと、単に文書回答するだけであつて、分会とは全く交渉していないのである。

③ そして、会社が支部に対して、分会組合事務所の設置場所及び広さについて初めて会社案を提示した以後は、五一年三月一八日にその修正案を最終案であると文書回答したに過ぎない。また、会社最終案に対する組合側の対応に関する会社主張については、会社の最終案なるものは、前記第一の二の認定のとおり、千葉地労委の要請にもとづき提示されたものであることからみれば、同地労委への申立人となつている支部が、会社案に対する見解を示すのは当然であり、同地労委の要請により提示された会社案に分会から何等の意思表示がなされなかつたとしても、そのことが分会の団体交渉申入れに影響を及ぼすものでもない。また、五一年四月八日及び同月一三日に行われた団体交渉は、前記第一の二の(19)認定のとおり、主として春闘要求に関するものであり、ほかに支部組合事務所の問題が若干話し合われたことは認められるが、会社はその最終案を固執するのみで、これ以上交渉しても無駄であると述べ、およそ組合事務所問題に関する誠意ある団体交渉といえるものではない。結局のところ、会社は五〇年一一月一一日の支部との団体交渉以来、それぞれ独自の団体交渉権を有する支部、分会のいずれとも団体交渉を行つていないのであるから、二重交渉になるとの会社の主張をそのまま認めることはできない。

(二) 会社は、土浦事業所の労使問題の組合交渉については、事業所長には交渉権を与えておらず、支部との団体交渉要員を充てることにしており、また、その交渉要員としている総務部長は、同事業所の建物配置等を知悉しているので、工場施設の増改築については、その権限を持たない事業所長を団体交渉に出席させても何等寄与するところはなく、また、団体交渉に参加させなければならない法的根拠もないと主張する。

たしかに、本件の場合、会社の一事業所長にすぎない土浦事業所長が、会社とともに団体交渉に必ず参加しなければならないとする理由は認めがたい。

しかしながら、事業所長は、いうまでもなく事業所に関する限り、会社側の当面の最高責任者なのであるから、交渉権を与えられていなくとも、分会の意向の聴取、所長の権限の範囲等の説明を行うなど、会社との交渉の窓口的役割はなしえたものと考えられる。しかるに会社及び事業所長は、いずれも分会の団体交渉の申入れの当初から、事業所長には交渉権がないと文書回答したのみで、権限ある交渉要員の派遣等、分会と交渉を行うという姿勢もみせなかつたのであつて、このような会社の態度は首肯し難く、事業所長に交渉権を与えていないことをもつて、団体交渉を拒否する正当理由とはなしえない。

(三) 会社は、組合事務所設置の問題は、一事業所に限らず、全社に影響を及ぼすものであり、組合が自ら示した基準にしたがつても、分会を団体交渉の当事者とすべきものではないと主張する。

しかしながら、分会組合事務所を設置し、貸与するということは既に支部との交渉で了解に達しており、未解決となつているのは、具体的設置場所と広さの点である。仮に、設置場所と広さの問題が全社的に影響を及ぼす問題であるとしても、支部交渉とするか分会交渉とするかについて、現に双方に異論がある以上、先ずその振り分けについて支部なり分会なりと交渉を行うべきであり、このような手続きを経ず、当初から一方的に全社的問題であるとして、分会との団体交渉を拒否する会社の態度を是認することはできない。

(四) 会社は、相手方交渉当事者の交替によつて、会社としては、従来積み重ねられた交渉が変更されるおそれがあり、また、団体交渉ルールから始めなければならない等、無駄なエネルギーを浪費させられることになる等の不利益がある反面、分会にとつては、会社が分会と団体交渉を行わなくとも、会社と支部との団体交渉に二名の分会役員が支部執行委員として参加しているから、何等不利益はないと主張する。

① しかしながら、前記第一の二の(六)、(八)、(一六)、(一八)及び三の(一)、(二)認定のとおり、分会組合事務所の設置場所及び広さの問題については、双方から要求と回答の文書が取り交わされているに過ぎず、支部との交渉でこの点につき、やりとりが重ねられたと認められる資料もないから、積み重ねられた交渉が変更されるおそれがあるという会社の主張は採用することができない。

また、分会は支部の下部組織であるとはいえ、単位組織として独自の団体交渉権を有するものであり、分会が団体交渉を申し入れる以上、団体交渉ルール等から交渉を始めなければならないとしても、このような交渉の手続上の煩瑣は、そのことを団体交渉拒否の正当理由とすることはできない。

② また、支部との団体交渉に二名の分会役員が参加しているからといつて、分会がその独自の団体交渉権にもとづいて、現に団体交渉を申し入れている以上、分会との団体交渉を拒否する正当理由とならないことも論をまたない。

二 重複申立てについて

会社は、支部が千葉地労委へ申立てている組合事務所設置に関する団体交渉の問題は、これまで支部との団体交渉において、分会組合事務所も含んでいるとの共通の認識のもとに行つていたことから、その申立ては、支部、分会双方の組合事務所に関する問題であるので、本件救済申立ては、これと重複する申立てであると主張する。

しかしながら、本件手続きにおいて提出された甲第六〇号証及び第六一号証によれば、支部が千葉地労委に申立てしている組合事務所設置に関する団体交渉応諾の件の範囲には、土浦分会組合事務所は含まれていない旨明示されており、会社の主張は採用できない。

三 本件不当労働行為の成否について

前記第一の三の認定の事実及び前記二の各判断を総合すると、本件は、分会の団体交渉の申入れ、特に分会が単独で行つた五一年二月六日以降の申入れに対し、会社がそれらの申入れの当初からこれを拒否していることが認められ、さらに、会社の挙げる団体交渉拒否理由はいずれも正当理由となりえないと判断されるので、会社の行為は労働組合法第七条第二号に該当する行為であつて、これを不当労働行為であるとした初審判断は相当である。

なお、上記一の(二)判断のとおり、初審命令主文第一項中の土浦事業所長に関する部分は適当でないので、主文のとおり変更することとした。

以上のとおり、初審命令主文第一項中の土浦事業所長に関する部分を除き、本件再審申立てには理由がない。

よつて、労働組合法第二五条、同第二七条および労働委員会規則第五五条を適用して主文のとおり命令する。

昭和五四年一二月一九日

(会長 平田冨太郎)

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